Sierから地方公務員へ転じた20代男の戯言

Sier勤務から地方公務員へのジョブチェンジを経て今に至る20代男が、普段考えていること・読んだ本のレビュー等を書き連ねていくブログです。

【読後レビュー17冊目】東京一極集中が日本を救う 市川宏雄

 

 

本文より。
 

少子高齢化が急速に進む日本では、これから先、労働力も資源も急速に枯渇していくだろう。それを見据えたいま、「国土の均衡ある発展」に代わる国家のビジョンをどう描くべきか。それは端的にいえば、「集積と集約(コンパクト化)を生かした国家の創造」である

 

A 本の要約:
  1. どんなもの?
    都市政策を専門とする大学教授の筆者が、日本の発展のためには東京への人口・財政的集中が望ましいという論を述べている。都市間競争となった現在では、地方へのバラマキ的な均衡ある国土発展を目指すというよりは、世界的に魅力ある都市として位置づけられている東京へ人的リソースや資金を集めて、世界に伍するような都市にし続けなくては日本の発展はないと主張している。

  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
     基本的には今度の国土計画としてコンパクトシティが必要であると考えており、まず東京へ最も集中させる必要があると述べている。その次として他の3大都市圏や各市町村レベルの集約が必要だと筆者は感じているようだ。
     東京への集中のポジティブな理由として、世界レベルの調査を用いて世界の中での東京の高い位置づけを説明している。各指標の説明が詳細で、「感性価値」という指標の紹介もあった。


  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    東京一極集中した結果のデメリット部分についても詳しく記述が欲しかったと思う。住んでいる日本人から見ると、デメリットとなる生活環境や通勤環境という問題は色々なところで議論されている。多国の中心都市との比較などがあれば、他と比べて比較的マイルドにデメリットが発生しており、デメリットを抑制するためにこのような取り組みがなされている・今後必要、という議論ができたと感じる。

  4. 新しいと思った3点
    ・世界的には医療ツーリズムという流れがある。医療を受けるために、特定の国に行く、という発想。日本の湯治のようだなと感じた。
    ・東京はインフラ刷新の時期に来ていて、地方のどこそこを直すよりも、首都高を直さないと日本の物流が死んでしまう。
    ・近々起きる東京の超高齢化は世界に例を見ない。高齢化に対する対策として、高齢者同士の扶助の必要性があるとの指摘。


B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
          均等な国土発展はもう難しい。人口のストロー現象は止まらず、日本全体の人口も減っている。その中で地方の集積と東京への集中は避けられないのかもしれない。その中で集積の中心にどうやってなるか。またどのような位置づけで集積の中で存在感を出すのか。
 
C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    大きな流れとして集積と集中は起きてくるのだと思う。集積の一部として、集積に伴う不満に対して対処していかなくてはいけないと思う。山間に住む人、数世帯しか無い
    集落。それらをどうソフトランディングさせて集積へ導くのか。この課題はこれから東京以外の全ての自治体で発生するだろう。

【読後レビュー16冊目】日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか? Rochelle Kopp

 

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

 

 

本文より。
 

ここで最も重要なのは、日本企業の人事管理が企業自体にとっても、もはや上手く機能していないという事実である 

  1. どんなもの?
    日米で人事コンサルとして働く筆者が、日本的人事管理のデメリットについて記述し、日本の新しい人事管理の姿について記述するもの。日本的雇用の「正社員」「就社」「流動性の低い労働市場」「やる気ある職員を当たり前と捉える風土」について批判的に述べている。
    新しい人事管理の姿として以下を推奨している。

    ・日本企業は、仕事の定義を明確に表現すること。企業内の各職務の内容、その職務にどのようなスキルが必要かを明確に特定する。  

    ・日本企業は、面接時および就職後の各社員のスキルと能力を判断すること。それには履歴書の読み方、面接の行い方について正確な知識と能力を備えていることが前提となる。また、社員のインプット(就労時間や「努力」)だけではなく、アウトプットを正確に判断できる、着実な業績評価の実施も含む。  

    ・日本企業は、社員がどのような仕事を希望しているか、どのような野心を持っているかについて耳を傾けること。また、社員が自分の希望を企業に知らせるための機会を設けること。
     
    ・日本企業は、仕事の要求事項を満足させ、かつ社員がやる気を持って挑戦できる職務と社員の組み合わせをすること。

    ・日本企業は、人事異動や昇進の計画に使用し、かつ社員が将来の計画を立てるために利用できるキャリアパス(昇進経路)を構築すること。


    日本企業は、権利を放棄し極端な服従の態度を示す「正社員」のコンセプトを捨てるべきである、というのが私の見解だ。社員を取替えの効く部品・代替品として扱い、仕事を単に横方向への交代経路として扱うのではなく、人事管理への新しいアプローチは、個人と仕事のユニークさに焦点をあて、両者を上手く組み合わせていくことにある



  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    成熟した個人を前提に、個人がモチベーション高く働けるためには組織はどのような人事管理が必要か、という観点でまとめている。日米どちらでも人事コンサルをやっている筆者であり、それぞれの国の分析は的確なのであろうという期待がある。

  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    日本のムラ的な雰囲気・文化との融合のような議論が欲しかった。このようなドラスティックな改革を行う際に必ずハードルとなると想定されるためだ。ただ、ムラ的な文化との対立については、世代間論として50年後はどうなっているかを検討することで解決できる気もする。



  4. 新しいと思った3点
    ・職務内容記述書に全ての職務が記載されている。またその職務内容記述書にある職務が全うできない人材なら登用されることはない。

    ・個人のモチベーションを重要視しており、自分は何が得意か、何に情熱を注ぐことが出来るかという観点から自分を見つめ直すことが求められている。いかに人事管理制度を整備しても、前述の問に答えられない人材ではモチベーション高い働き方は難しい。
    ・目的に導かれたキャリアという考え方。「することが大好き」「世界が必要としている」「報酬をもらっている」「することが大得意」という4つの事柄すべて満たすものが人生における目的である。


 
B 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    職務範囲を決めるということは働くことへのモチベーションという観点から重要だと感じた。職務範囲を決めることで、自分の仕事に責任が生まれるし、その職務の専門性をあげようというモチベーションにもなる。逆に、企業として決められていないのであれば、自分の中で定義をしていくことも必要ではないかと感じる。

【読後レビュー15冊目】まちづくりデッドライン 木下 斉;広瀬 郁

 

まちづくり デッドライン

まちづくり デッドライン

 

 

本文より。
 

まちづくりを大きく分けると、都市を取り扱うものと、農村・漁村などを取り扱うものがある。本書では前者の都市を対象とし、その「中心部」を守り抜くための実効性のある方法を提案したいと考えている

 

 
A 本の要約:
  1. どんなもの?
    地域活性化のための社団法人理事の筆者と建築学者の筆者が地域活性化を行うための理論を教科書的にまとめた1冊。商店街や駅前を中心とする「まち」がなぜ発展してきたのか、なぜいま衰退が止まらないのか、なぜ地域活性化の施策はうまくいかないのか、という各論と、経営・会計的な側面から「稼ぐこと」の出来るまちにするための理論的な説明が行われている。最後にまちづくりとして成功しているという事例について取り上げている。

  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    筆者らの体験からかなり具体的なアクションについての言及があると感じた。特に6章。

  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    この本の内容としては不動産オーナーや商店経営者へのアクションが多く記述されていた。さらに言えば、このようなアクションをそれぞれのアクターがするために、行政からのアクションは何が必要なのか、ということを考える切っ掛けとなった。


  4. 新しいと思った3点
    ・他の成功例の真似では、自分のまちは成功しない。
    ・人口減・不動産余りの現状を背景として、これまでの大家>入居者・住民の力関係が、大家<入居者・住民に変わってきている。
    ・既にデットラインは近くまで来ている。助けられない地域が存在する。


B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
    相当な覚悟を持って行動しないと地域活性化は難しいのだな、と逆に感じた。地域という環境は住民など関係アクターが多いため、中々一筋縄ではいかない。その中で上手く事業を進めようとするならば、専門性の高いメンバーを集める必要がある、という記述があった。自分はその専門性を持った人材になれるように努力しないといけないと感じた。
 
 
C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    行政からのアクションとして何が必要なのかを考える機会となった。用地規制などへの対応、飲食店出店手続きの簡略化、不動産の借り手が不動産を見つけられるような仕組み作りなど。

【読後レビュー14冊目】年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学 エンリコ モレッティ

 

 

本文より。
 

都市にハイテク関連の雇用が一つ創出されると、最終的にその都市の非ハイテク部門で五つの雇用が生まれる。雇用の乗数効果はほとんどの産業で見られるが、それが最も際立っているのがイノベーション産業だ。

 
A 本の要約:
  1. どんなもの?
    カリフォルニア大学の経済学者である筆者が、イノベーション企業の隆盛について説明するもの。イノベーションを起こすような知識集約的な企業があると、その場所周辺でそのような企業同士の公式・非公式なコラボレーションが起き、業績向上がありさらなる知識集約的な企業が集まる理由となる。その結果、人口が増大し、関連するサービス業の雇用が生まれる。これまでは製造業(車、エレクトロニクスなど)がサービス業の雇用を生むハブだったが、その地位が知識集約的企業に移り変わってきているということを示唆している。


  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    アメリカにおいて、都市間で給与を比べると都市によって圧倒的な差があることを明らかにした。平均給与、昇給率など、当たり前といえば当たり前だが様々な指標を都市間で比べるとA都市の最低ベレルがB都市の最高レベルだったりする。
    また、給与だけでなく住んでいる地域によって教育レベルや投票率、更には平均寿命にすら有意な差異が見られることを述べている。

  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    なぜローカル経済から〜の内容と背反する部分が一分ある。

    rockeyy2.hatenablog.com


     ローカル経済から〜では、日本を舞台にGDPの7割を生み出すローカル企業(主にサービス業)にスポットを当て、それらに対する今後の見通し、必要な戦略について記述していた。その中ではグローバル企業は日本国内にトリクルダウンを起こせないという前提になっていたが、本書籍ではトリクルダウンを前提として、都市にイノベーション企業があること必要性を説いている。
     私見ではあるが、これはサービス業の構造の違いによるものではないだろうか。それこそグローバル企業並みに集積されたチェーンのサービス業が多い地域であれば地元企業へお金は落ず、地元資本の企業が多ければトリクルダウンによる効果は見込める。ただ、トリクルダウンを企業サイドから見るか従業員サイドから見るかという差であるということも言えると思う。企業サイドから見ると、地元企業の売上が向上しないとその都市・地域へのトリクルダウンが起きたとは言わないが、従業員サイドからすれば、その地域にすむ労働者の雇用が生まれ、賃金が発生すれば、雇用主がどんな企業であろうとトリクルダウンが起きた、と言うだろう。

  4. 新しいと思った3点
    ・都市に必要なのは特定企業ではなく、特定企業が本社を置こうと思うための設備やサービス業の充実具合である。
    デトロイトロチェスターなどの製造業のあった都市は、その企業単体に頼りすぎた。本当に都市反映のために必要だったのは企業ではなく、企業を中心とした「エコシステム」だった。

    一流大学があることは重要だが、それだけでは、イノベーション産業の集積地が形成・維持されるとは限らないのだ。(中略)地域経済を発展させるうえで大学が最も効果を発揮するのは、専門性の高い労働力と専門サービス業者とともに、イノベーション活動のエコシステム(生態系)を形成している場合だ。集積地が形づくられれば、大学は集積地の成長を促すために大きな役割を果たし、集積地の成功を支えるエコシステムの柱として機能する場合も多い。

     



B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
    自分の生活もこの地域性、集積効果のメリット・デメリットが発生することを念頭に置く必要がある。朱に交われば赤くなるということわざを実証したこの書籍で、今まで何となく感じていた地域ごとの差というものを強力に意識するに至った。住む場所選びはそこまで重要で自分たちの将来に大きな影響をあたえるものであることを認識すべきと感じた。
 
 
C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    仕事にもこの書籍の内容は大きな示唆を与える。地方政策を考える上で、企業側にとっていかに魅力ある年にするかという点を抜きには出来ない。企業に魅力ある土地で、近隣に住む人が増えると税収としても増える。当たり前ではあるが、人の集積を抜きには今の都市発展は考えにくい。また、大学の重要性についても示唆がある。卒業生が地元企業へ就職し専門性の高い労働力になること、その高い専門性が住民へ波及することが期待される。
 

【読後レビュー13冊目】「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える 常見 陽平

本文より。

「頑張るのに疲れた」なんて言うと、いかにも「負け組」のような、やる気がなく「ゆるい」者のように思われてしまうかもしれない。  だが、日本人が思わず口にしてしまう「頑張れ」という言葉は、置かれている環境によっては「暴力」になってしまう

 
A 本の要約:
  1. どんなもの?
    働き方コンサル、現千葉商科大学国際教養学部講師である筆者が、現代の若者を覆う4つの強迫観念について分析し、「頑張る」による若者の疲弊、「出来る人にならなければ」という強迫観念について警鐘を鳴らすもの。

  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    現代の若者の働き方・キャリアを語る上で再三登場する4つのキーワード、即戦力、グローバル、コミュニケーション能力、起業について、その言葉が出てきた背景分析、実現可能性などを考察し、「若者に責任をなげっぱなしにするな」ということを語っている。
    基本的には世代間論であり、昔に比べて高度情報化する社会で求められるスキルは際限なく上がる。(インフレ化と筆者は言う)その中で若者へ「頑張れ」と連呼し、期待「だけ」をする社会は果たして正しい社会だろうかという問題提起をしている。実態としてカネやコネがなければ成長も飛躍も出来ない社会の中で、頑張る「だけ」で勝負させるのは若者の疲弊を進めるだけ、と断言している。

  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    疑問とは少し違うが、この本は「頑張れ」に疲れる若者という問題提起にはなるが、ではどうするかという点から見ると別冊にてという形になりそうだ。


  4. 新しいと思った3点
    ・4つの強迫観念全て共通して、閉塞した日本経済からの英雄としてザッカーバーグらの一部の天才が持ち上げられ、その結果生まれたものと言う特性がある。
    ・入社式の訓示を時系列に紐解く、という手法で若者のキャリア論に関してホットなキーワードを分析していること。入社式の訓示にはトップ層が今の社員に足りないものを新人に語るものだからだ。
    ・4つの強迫観念について「本当にそれが必要ですか?」「誰がそれできるの?」という点から批判的に捉えて分析を開始している。


B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
    あとがきの文章が震える。

    あえて言おう。何も考えない努力は無意味である。もはや努力しても成果につながらない時代と言われる。平成とは、じわじわと環境が苦しくなり、社会のルールが大きく変わった時代である。いや、だからこそ「努力しろ」と煽られるのだが。  何も考えない努力は無駄である。いま求められているのは、「努力のデザイン」、「経験の意味づけ」なのだ」

    どのように努力すれば成功できるのか。成功の定義とは何か。そもそも成功する必要があるのか。そのレベルから考えていかないといけない。
 
 
C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    努力することは前提となってしまう。努力は続けられるようにしないと。また、キャリア形成として今の仕事の意味付けをしていかないといけないと思うし、資格取得やその他の勉強も意味づけを出来るようにしないといけないと感じた。

【読後レビュー12冊目】なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 冨山 和彦

 

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書)

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書)

 

 

本文より。

異なる経済特性を持つ産業領域AとBがあったとすると、このAとBを両方ともうまく回す統一の経済学的理論は存在し得ない。グローバルな経済圏Gとローカルな経済圏Lの経済特性は、現実問題として大きく異なるのである。

 

 
A 本の要約:
  1. どんなもの?
    経営コンサルタントの筆者が、少子高齢化による「仕事量・売上は変わらない(むしろ減っている)のに供給力不足」という日本の状況について、G(グローバル企業)とL(ローカル=経済圏が地方に限定される企業)の2つに分けて分析を行っている。日本企業を分類するとG、Lの2つに分けることが出来る。グローバルな経済圏を持つサービスを提供する企業と、特定地方にいる人向けにサービスを提供する企業だ。前者は電機機械・医療機器・製薬など。後者は交通・飲食・社会福祉サービスが当たる。

  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    比較的詳細な対策、具体的な政策について記載があったこと。Gの企業・Lの企業への現状分析から始まり、それぞれの目指す姿、それに対する課題と解決策について詳細に述べている。



  3. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    Gの企業、Lの企業に対する改善策の記載があるが、総花的というか筆者の主観で挙げられている感覚はある。主張したい部分を幾つか述べているという印象。



  4. 新しいと思った3点
    ・Gの企業とLの企業の
    特性として、前者は知識集約産業で専門性の高い人材か一部のトップ層の人材がいる。後者はGDPや雇用の約7割を占めており、地方ごとに商圏が別れているので他地域の類似企業と競合することはない。重要なのはGの企業が儲かればLの企業が儲かる、は過去より薄くなってきているということだ。これまでトリクルダウンされるとして、Gの企業への優遇策などが製作的に行われたが、そのダウン先は日本国内ではなく海外の組み立て工場や安い労働力を提供できる外国へ移ってしまった。その結果、雇用やGDPの7割を占めるLの企業の収入力改善には効果がなかった。
    ・Gの企業とLの企業へのサポートはそれぞれ違う。Gはグローバルで勝ち抜くための戦略を練らないといけないし、Lは存在する経済圏の中でいかに存在感をあげられるか、地域での集約化を進められるかが鍵になる。
    ・G向けの人材、L向けの人材が存在し、それぞれへの教育も違いがある。


B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
    Gの企業とLの企業で、働く人のモチベーションが異なると感じる。Gは「世界に飛躍」かも知れないし、「自己改革」かもしれない。一方でLは「地方の人への貢献」かもしれないし、「地元でのトップ」かもしれない。


C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
    自分の今の仕事は完全にLで、緩やかな撤退と集約が必要とある。自治体としてみるとGとL両方あるなと。G的な分野としては産業振興など、L的な分野は建設や福祉。それらを分けて考えることが必要だと感じた。また、両方の分野として、働く側の生産性の向上が必要だと感じる。

【読後レビュー11冊目】「読まなくてもいい本」の読書案内 __知の最前線を5日間で探検する 橘玲

 

 

本文より。

そこで本書では、まったく新しい読書術を提案したい。問題は本の数が多すぎることにあるのだから、まずは選択肢をばっさり削ってしまえばいいのだ。 

 

 
A 本の要約:
  1. どんなもの?
    元宝島社の編集者で、投資論など数々の著作を持つ筆者が、学問的な分野の本で「読まなくてもいい=学問として古くなり淘汰された議論や思想」について説明している。大きく分けて5つの分野でのパラダイムが起きたことで、様々な古い学問は不要になったと筆者は述べる。その5つの分野とは、①複雑系②進化論③ゲーム理論脳科学功利主義である。何かを学ぶ時、原典にあたることは重要だが、①〜⑤の学問分野に関しては最新の理論に当たる方がいい。逆言うとこれらの分野が活性化する前の他の学問分野についても陳腐化の可能性があるということ。


  2. 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
    筆者の知識量とそれを端的に説明する文章力が凄まじい。上記の①〜⑤についての現在までの変遷を追うだけでも相当な知識と下調べが必要だとわかる。そして決して平易な言葉ではないが、「なぜ」「なのでこうなる」といういわゆる「why」「so what」のある文章で、頭の中で理解が進むような内容になっている。

  3. 技術や手法のキモはどこ?
    筆者がもつ知識を近年爆発的に伸びている学問分野に限定して、その分野の変遷とその爆発的な伸びによって淘汰された・されるであろう学問分野についての示唆がある。


  4. 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
    筆者がこのような知識を持つに至った経緯について知りたいと思った。膨大な分野の文献や知識の凝縮がある本に仕上がっているのは筆者の情報編集能力の賜物だろう。ここまでの内容をこれだけ整理して語れる、筆者の知識がどのように出来上がったのか。


  5. 新しいと思った3点
    ・最近の学問分野の爆発的伸びに着目し、「読まなくてもいい本」を示唆するという手法。読むべき本というのはいつの時代もあり、勧められるけどそれはいつの時代も有用であるとは限らない。理系分野は新たな研究ですぐに古い分野は淘汰されるが人文学系や社会科学系はそれが少ない。過去の議論は新たな技術や研究の登場で一気に陳腐化する。
    ・陳腐化しない背景には、その分野にいる専門家たちの既得権がある。
    ・ここまで広範囲の分野を詳細に解説できる人がいるということにハッとした。

B 自分の中での気付き:
  1. この本を通して自分の生活を振り返ると?
    文章の書き方について参考にすべき点があると感じた。とにかく筆者の文章には結論を書くために最短経路で言葉を並べている印象。不要な部分や冗長なところがない。
    文章の書き方だけでなく、仕事上で説明する際などにも参考になると感じた。

C 気づいた結果として起こそうと思う行動:
  1. この内容を使える場面は?
  何かを学ぶ際は「なぜ」「なのでこうなる」を意識する。