【読後レビュー16冊目】日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか? Rochelle Kopp
本文より。
ここで最も重要なのは、日本企業の人事管理が企業自体にとっても、もはや上手く機能していないという事実である
- どんなもの?
日米で人事コンサルとして働く筆者が、日本的人事管理のデメリットについて記述し、日本の新しい人事管理の姿について記述するもの。日本的雇用の「正社員」「就社」「流動性の低い労働市場」「やる気ある職員を当たり前と捉える風土」について批判的に述べている。
新しい人事管理の姿として以下を推奨している。
・日本企業は、仕事の定義を明確に表現すること。企業内の各職務の内容、その職務にどのようなスキルが必要かを明確に特定する。
・日本企業は、面接時および就職後の各社員のスキルと能力を判断すること。それには履歴書の読み方、面接の行い方について正確な知識と能力を備えていることが前提となる。また、社員のインプット(就労時間や「努力」)だけではなく、アウトプットを正確に判断できる、着実な業績評価の実施も含む。
・日本企業は、社員がどのような仕事を希望しているか、どのような野心を持っているかについて耳を傾けること。また、社員が自分の希望を企業に知らせるための機会を設けること。
・日本企業は、仕事の要求事項を満足させ、かつ社員がやる気を持って挑戦できる職務と社員の組み合わせをすること。
・日本企業は、人事異動や昇進の計画に使用し、かつ社員が将来の計画を立てるために利用できるキャリアパス(昇進経路)を構築すること。
日本企業は、権利を放棄し極端な服従の態度を示す「正社員」のコンセプトを捨てるべきである、というのが私の見解だ。社員を取替えの効く部品・代替品として扱い、仕事を単に横方向への交代経路として扱うのではなく、人事管理への新しいアプローチは、個人と仕事のユニークさに焦点をあて、両者を上手く組み合わせていくことにある - 今まで読んだ本と比べてどこがすごい?
成熟した個人を前提に、個人がモチベーション高く働けるためには組織はどのような人事管理が必要か、という観点でまとめている。日米どちらでも人事コンサルをやっている筆者であり、それぞれの国の分析は的確なのであろうという期待がある。 - 議論はある?(自分の中で浮かんだ疑問や反証)
日本のムラ的な雰囲気・文化との融合のような議論が欲しかった。このようなドラスティックな改革を行う際に必ずハードルとなると想定されるためだ。ただ、ムラ的な文化との対立については、世代間論として50年後はどうなっているかを検討することで解決できる気もする。 - 新しいと思った3点
・職務内容記述書に全ての職務が記載されている。またその職務内容記述書にある職務が全うできない人材なら登用されることはない。
・個人のモチベーションを重要視しており、自分は何が得意か、何に情熱を注ぐことが出来るかという観点から自分を見つめ直すことが求められている。いかに人事管理制度を整備しても、前述の問に答えられない人材ではモチベーション高い働き方は難しい。
・目的に導かれたキャリアという考え方。「することが大好き」「世界が必要としている」「報酬をもらっている」「することが大得意」という4つの事柄すべて満たすものが人生における目的である。
B 気づいた結果として起こそうと思う行動:
- この内容を使える場面は?
職務範囲を決めるということは働くことへのモチベーションという観点から重要だと感じた。職務範囲を決めることで、自分の仕事に責任が生まれるし、その職務の専門性をあげようというモチベーションにもなる。逆に、企業として決められていないのであれば、自分の中で定義をしていくことも必要ではないかと感じる。