Sierから地方公務員へ転じた20代男の戯言

Sier勤務から地方公務員へのジョブチェンジを経て今に至る20代男が、普段考えていること・読んだ本のレビュー等を書き連ねていくブログです。

【読後レビュー41冊目】縮小ニッポンの衝撃 NHKスペシャル取材班

 「これから少子高齢化の時代になっていきます」 

この言葉を私が初めて聞いたのは、私が小学生の頃だったと記憶している。10数年前。

この時間がたった今でも労働力不足、地域の人口不足というトピックで「少子高齢化」という話題は出てくる。

 

自治体職員となった今、「縮小する地域をどうするか」という問題意識は喫緊のものであり、話題となっていた本書を読んだ。

 

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

 

 

 目次

 

ポイント:

 ①

2017年に発表された最新の予測では、人口減少のペースが若干弱まってはいるものの基調はほとんど変わっていない。国立社会保障・人口問題研究所は、出生率や死亡率の高低に応じて複数のパターンの予測値を発表している。真ん中の中位推計では、2053年には日本の人口は1億を切り、2065年には8808万人になるという。これから約50年間で実に3901万人の日本人が減少することになる

 

 ②

ところが、2000年以降に始まった一極集中は、過去の2回とは異質なものだった。国立社会保障・人口問題研究所の小池司朗室長は、こう分析する。 「3回目の人口集中は必ずしも好景気に伴うものではありません。就職氷河期と呼ばれる状況が続く中で、地方で仕事に就くことが出来なかった若者たちが、東京に出てきて職を求める流れが起きた。その結果、都市部に大量の人口流入が起きたのです」  つまり、過去2回は「東京へ行けば生活が良くなる」という動機だったのに対し、今回は「地方から逃げ出す」というような〝ネガティブ(消極的)な集中〟だと言うのだ

 

 ③

どんなに追い詰められても自治体は消滅を選ぶことはできない。人口減少がさらに進み、財政が苦しくなりあらゆる行政サービスの効率が悪化しても、そこに住民がいる限り、自治体は逃げることはできないのである。そうした状況の中で繰り広げられる戦いを私たちは「撤退戦」と名付けた。

 

 ④

縮小の時代。そのとき自治体職員たちは住民の痛みに正面から向き合うことを迫られる。それは、拡大の時代を生きてきた公務員たちがおよそ感じることのなかった痛みである。自治体を安定的に継続させていくために、どれだけの痛みを住民に引き受けてもらうのか。市民のために働くとはどういうことなのか。そもそも、自治体とは何のためにあるのか。これからの時代、自治体職員はこれまで以上にこうした本質的な問いに向き合わなければならなくなるのかもしれない

 

 ⑤ 

市外のスポーツ大会で小学生が夕張のチームであることを隠そうとしたり、大学生が町を出ていっても自分が夕張出身であることを話したがらない。子どもたちは、夕張市民であることを恥じている──そんなショッキングな話も伝わっていた。佐藤さんが最も恐れていた「子どもたちを犠牲にしている」という事態が現実のものになっていた

 

 ⑥

国は、住民自身に公共サービスを担わせるための制度整備に力を入れる一方、「どこまでが行政の仕事か」の議論は行っていない。つまり、グレーゾーンを残したまま住民組織に、サービスの代行を委ねようとしているとも言える。なし崩し的に、住民の互助が求められる領域が拡大する恐れもあるだけに、協議会のメンバーにもどこか不安があるように見えた

 

 ⑦

林氏は、過疎化している集落が直面している問題や環境はそれぞれ異なるので、マニュアル的な対応はできないと断ったうえで、「集団移転」も選択肢の一つと説明する。 「最悪のパターンが、集落に住んでいる人が高齢化で病気がちになり、通院や介護のために集落を次々と離れていき、四散してしまうケースです。消滅を座して待つくらいなら、余力があるうちにみんなで麓に降りるという選択肢もあっていいと、私は思います。  ただし、集団移転といっても、どこでもいい、というわけではありません。ポイントは、縁もゆかりもない遠い場所ではなく、例えば麓の地区など、これまで買い物や通院で通っていた利便性の良い場所に住民の合意の上で移転することです。これなら住民の皆さんの抵抗感も少なくて済みます

 

 ⑧
ただし一方で、林氏は、「集団移転は、あくまでも住民のために、そして住民の合意の上で行われるべきもの。コストを減らすことを目的として集団移転を進めるとしたら、それは大きな間違いだ」と釘を刺すことも忘れなかった
 
 

気づき:本文から得られた示唆、抽象化された気づき

 
 ③逆に財政健全化団体となって撤退戦を余儀なくされているということを内外にアピールできたのだから、改革はむしろしやすくなったのだと思う。問題なのは京都市のようなキャッシュフロー的に破綻しているが、今後の収入増を期待している、考慮している自治体。いつどのような形で撤退戦を始めるかが検討されないまま、人口減が始まる可能性がある。
 
 ⑥これは自治体と住民の認識のズレだと感じる。何かしらの自治体からのフォローがあれば、このような認識のズレは起きないのではと思う。財源がもらえた一方で何も現在のサービスが変わったわけではない。なら住民互助の範囲が広くなるであろう範囲について、対策を検討するなり無理なら無理と他の地域と強力を仰ごうとするなり、方法はあると思う。
 
 ⑦余力のあるうち、つまりは夕張になる前に検討を始め、夕張になる前に移動をすべき。その議論の中で、子供に見てもらうという人も出てくる。一方で移動先の選定は重要。
 

行動:気づきで得られた知見を基に、どうすればいいのかという具体的なアクション・仮説

 

・これから人口が減らない自治体はほとんどありえない。東京都ですら人口減少はある。

・今自分が住んでいる自治体は「夕張になりそうなのか」「なるとしたらいつ夕張になるのか」ということを知らないといけない。

・危機管理の問題として、どのような数値がどうなるとヤバイというラインを決めて、それをモニタリングし、ラインを超える時にアラートを出して対応ができるような仕組みづくりが大切だと感じた。